現代のたんすと言うと、デザインや素材が様々ありますが、一般的には一人ではちょっと運べないくらいの背の高さと横幅があるものが多いです。一方、江戸時代に開発され、広まっていた桐たんすは引き出しが3段ほどしかなく小さめで、側面には持ち運び用の金具がついているのが多く作られました。なぜそのような形になっているのでしょう。そもそも、桐たんすの歴史自体は浅く江戸時代後期から、明治時代に一般に広まっていきました。西洋から入ってきた、家具というものにたんすも含まれていて、それが日本の暮らしに合わせてこのような形になったようです。江戸時代には、風呂敷や行李が収納の方法であり、それらは持ち運べることを前提にされていました。一つには火事や水害などの災害の時に、すぐ持ち出せるようにという理由があります。そして普段の暮らしでも、食べる・寝ることが一つの部屋で行われるという暮らしの中では、それらの用品を常に出し入れしなければなりません。元々持ち物の少ない江戸庶民ですので、大きなたんすは必要なく、女手一つで手軽に持ち運べるという事が重要だったのです。そこで、西洋のように硬くて頑丈な木材を使用するのとは逆に、柔らかくて軽い桐が用いられるようになりました。嫁入り道具として桐たんすが受け継がれてきたのには、もともと女性目線で作られたものという歴史があったからと言えますね。古くなった桐たんすも、修理によってきれいにすることができます。お持ちの桐たんすがあれば、依頼してみてはいかがでしょう。